2024年(令和6年)度 後期に放送されたNHK「連続テレビ小説=朝ドラ」第111作の「おむすび」。
橋本環奈が主演を務めた現代設定の朝ドラとして話題を集めました。
タイトルの由来と意味
タイトル「おむすび」の由来は、主人公・米田結(橋本環奈)の米と結でついたあだ名から来ています。主人公の名前が物語のテーマを象徴する巧妙な設定となっています。また、「おむすび」という食べ物自体が持つ「人と人を結ぶ」「心を込めて作る」という意味合いも、ドラマ全体のテーマと深く結びついています。
あらすじ・ストーリー展開
物語の始まり(第1週〜第5週)
主人公・米田結(橋本環奈)が福岡県糸島での高校生活をスタートするところから始まります。平成生まれのギャルである結が、管理栄養士を目指すきっかけとなる出会いや体験を通して成長していく姿が描かれます。
結は当初、勉強にも将来にもあまり関心がない普通の高校生でした。しかし、ある出来事をきっかけに食と栄養の大切さに目覚め、管理栄養士という職業に興味を持つようになります。家族や友人たちとの関わりの中で、自分の進むべき道を見つけていく過程が丁寧に描かれています。
成長期(第6週〜第15週)
高校卒業後、結は管理栄養士を目指して専門的な勉強を始めます。この期間では、専門知識の習得だけでなく、実際の現場での経験を通じて、食の持つ力や人々の健康に対する責任の重さを学んでいきます。
また、恋愛要素も加わり、結の人間関係がより複雑で豊かなものになっていきます。仕事に対する情熱と私生活のバランスを取りながら、一人前の管理栄養士として成長していく姿が描かれます。
クライマックス(第16週〜第24週)
物語の中盤から終盤にかけて、結は様々な困難や挫折を経験します。職場での人間関係の悩み、家族の問題、恋愛関係の複雑化など、現実的な問題に直面しながらも、持ち前の明るさと周囲の人々の支えによって乗り越えていきます。
この時期に描かれる結の成長ぶりは特に印象的で、視聴者からも高い評価を得ました。単なるサクセスストーリーではなく、現実的な困難と向き合いながら成長していく姿が共感を呼びました。
最終週のあらすじ(第25週)
最終週「おむすび、みんなを結ぶ」では、聖人と愛子が糸島へ移住する展開が描かれ、家族の絆と新たな出発がテーマとなりました。結がこれまでの経験を活かして、地域の人々の健康と食生活をサポートする新しい取り組みを始める姿で物語は締めくくられます。
朝ドラ史上異色の現代設定作品が誕生
正直なところ、最初にこのドラマの存在を知った時は「え、また橋本環奈?」というのが率直な感想でした。でも、いざ視聴してみると、これまでの朝ドラとは明らかに違う新鮮さがあったんです。
2024年9月30日から2025年3月28日まで放送されたNHK連続テレビ小説「おむすび」は、第111作目という節目の作品。何より驚いたのが現代設定という点でした。最近の朝ドラって、昭和初期から高度経済成長期あたりを舞台にした作品ばかりだったので、平成から令和にかけての現代を描くなんて、相当な冒険だったと思います。
タイトルの「おむすび」は、主人公の米田結(橋本環奈)の名前から来てるんですが、これがまた絶妙なネーミングセンス。米と結で「おむすび」って、脚本家の根本ノンジさんのセンスには脱帽です。
福岡・糸島が舞台の意味深さ
個人的に一番感動したのが、舞台設定の妙でした。福岡県糸島市って、正直そこまで全国的に有名な場所じゃないですよね。でも、だからこそ良かったんです。
福岡で朝ドラのロケって『走らんか!』以来30年ぶりらしくて、地元の人たちの盛り上がりようが画面越しにも伝わってきました。糸島の海岸線とか、本当に綺麗で「ここ行ってみたい」って素直に思いましたもん。
橋本環奈さんが福岡出身ってのも、きっと偶然じゃないでしょうね。故郷での撮影って、演技にも自然さが出るものです。実際、彼女の博多弁には違和感がまったくありませんでした。
ストーリー展開の功罪
序盤の掴みは上々だった
最初の数週間は、正直「面白いじゃん!」って思ってました。平成ギャルの結が管理栄養士を目指すって設定も、今時らしくて良かったし。高校時代のエピソードなんて、リアルに「あるある」って感じで共感できたんです。
ただ、中盤以降がちょっと…。よく言われてる「ワープ展開」ってやつですね。急に時間が飛んだり、重要そうな出来事がサラッと流されたり。「え、そこもうちょっと詳しく見せてよ」って思う場面が何度もありました。
管理栄養士という職業選択の面白さ
でも、管理栄養士をテーマにしたのは本当に良いアイデアだったと思います。医者とか看護師とかと比べると、どうしても地味に見られがちな職業ですが、実は超重要な仕事ですからね。
特に高齢化社会の今、栄養管理って本当に大切。生活習慣病の予防とか、介護食の工夫とか、リアルな社会問題とも直結してるじゃないですか。そういう現代的なテーマを朝ドラで扱ったのは評価したいです。
コロナ禍の描写も「こんなんだったなぁ」と思い出しながら見ていました。あっという間に脱コロナしてましたが。
キャスト陣の魅力と課題
橋本環奈さんの起用については、最初は「またアイドル枠か」なんて思ったりもしました。でも、実際見てみると、意外と朝ドラの雰囲気に馴染んでたんですよね。
ヒロインのオーディションをやらずに直接オファーってのは珍しいパターンでしたが、結果的には悪くなかったかな。ただ、もう少し演技の幅が広がると、さらに良かったかもしれません。
脇を固めるキャスト陣も、ベテランから若手まで幅広く揃えてて、特に家族役の人たちは本当に温かい雰囲気を出してました。第3弾のキャスト発表で若手オーディション組が加わった時は、「おっ、新鮮な顔ぶれが来たな」って期待したものです。
視聴率13.1%が示すもの
正直、この数字を見た時はショックでした。視聴率13.1%って、朝ドラとしてはかなり厳しい数字で、ワースト更新となりました。「やっぱり現代設定は難しいのかな」って思いました。
でも、視聴率だけが作品の価値を決めるわけじゃないですし。特に若い世代には結構評判良かったみたいです。SNSでの反応とか見てると、「共感できる」「リアル」って声も多かったし。
問題は、従来の朝ドラファン層にどれだけ刺さったかってところでしょうね。お年寄りの視聴者の方々には、やっぱり歴史もののほうが馴染み深いのかもしれません。
現代設定の挑戦と限界
朝ドラで現代を描く難しさって、実際に制作してみないと分からない部分が大きいと思うんです。歴史ものだと、時代背景が物語を自然にドライブしてくれるじゃないですか。戦争があったり、高度経済成長があったり。
でも現代って、そういう大きな時代の波みたいなものが見えにくい。だから、個人の成長物語により重点を置かざるを得なくて、それがかえって普通のドラマっぽくなっちゃう危険性があるんですよね。
「おむすび」も、そこの部分で苦戦してたように感じました。現代ならではのエピソードをもっと織り込めたら、違った展開になってたかもしれません。
食と人をつなぐテーマの深さ
ただ、「食を通じて人と人をつなぐ」っていうテーマ自体は本当に素晴らしかったです。特にコロナ禍を経験した私たちにとって、人とのつながりの大切さって改めて感じる部分がありますからね。
おむすびって、日本人にとって特別な食べ物だと思うんです。お母さんが作ってくれるおにぎりの味とか、運動会のお弁当とか、そういう記憶と直結してる。そこに管理栄養士という専門職を絡めたのは、なかなか巧妙でした。
糸島への影響と地域振興効果
これは完全に成功だったと思います。ドラマ放送後の糸島観光への影響って、かなり大きかったみたいですね。ロケ地巡りツアーとか、地元の特産品の売上アップとか、地域経済にはしっかり貢献してたようです。
朝ドラの地域振興効果って毎回話題になりますが、今回も例外ではありませんでした。特に糸島って、福岡の人でも「ちょっと遠いかな」って感じる場所だったのが、一気に身近になった感じがします。
見逃し配信での楽しみ方
リアルタイムで全部見てた人は少ないかもしれませんが、NHKプラスやNHKオンデマンドで後から追いかけた人も多いんじゃないでしょうか。
個人的には、一気見よりも朝の15分ずつで見るほうが朝ドラらしい楽しみ方だと思うんですが、忙しい現代人にとっては配信サービスは本当にありがたいですよね。
ただ、配信期間の制限があるので、気になる人は早めにチェックしたほうがいいかもしれません。
音楽と映像の調和
これは意外と印象的だったポイントです。オープニング映像と糸島の風景の組み合わせが絶妙で、毎朝見てても飽きませんでした。
B’zの主題歌も、最初聞いた時は「う〜ん」って思ったんですが、だんだん耳に馴染んできて、最終的には「良い曲だな」って思えるようになりました。こういうのも朝ドラの醍醐味ですよね。
最終的な評価と今後への影響
結論から言うと、「おむすび」は成功作とは言い難いかもしれませんが、挑戦作としては評価すべき作品だったと思います。
視聴率は確かに低かったけれど、現代設定の朝ドラという新しい可能性を示してくれました。今後、また現代設定の朝ドラが作られる時の貴重な参考資料にもなるでしょうし。
個人的には、橋本環奈さんの新しい一面も見れたし、糸島という素敵な場所も知れたし、管理栄養士という職業についても考えるきっかけになったし、収穫は多かったです。
これから見る人へのアドバイス
もし今から見ようと思ってる人がいたら、「従来の朝ドラとは違うもの」として見ることをおすすめします。戦前戦後の波乱万丈な人生を期待すると、ちょっと拍子抜けするかもしれません。
でも、現代を生きる若い女性の等身大の成長物語として見れば、きっと共感できる部分があると思います。特に就職活動とか、将来への不安とか、リアルな現代の問題も描かれてるので。
全125話と長丁場ですが、糸島の美しい風景を眺めながら、ゆったりとした気持ちで楽しんでもらえればと思います。朝の15分間を、ちょっと特別な時間にしてくれる作品だったのは間違いありません。